「西フランク王国の建築家(Architects of the West Kingdom)」は、中世ヨーロッパの建築と倫理をテーマにした、戦略性の高いワーカープレイスメントゲームです。プレイヤーは王国の建築家として、建物を建設し、民を雇用し、時には法の目をかいくぐりながら王に仕える存在となります。
本作の最大の魅力は、単なる「労働者配置ゲーム」ではなく、ワーカーを”積む”ことで効果を増幅させる独特のシステムと、行動の選択によって美徳が上下しそれがゲーム結果に大きく影響するという倫理的ジレンマです。さらに、他プレイヤーとの高度なインタラクションもあり、プレイのたびに異なる展開を見せます。
このガイドでは、基本的なプレイの流れから、各戦略タイプの詳細、上級者向けのテクニック、さらには人数ごとの戦い方まで総合的に解説していきます。初心者にもわかりやすく、かつ経験者にも参考になる内容を目指しました。
ゲーム進行段階ごとの戦略アプローチ

序盤戦略:土台を築く重要な時間帯
序盤のプレイは、中盤以降の戦略を成立させるための「基礎固め」にあたります。目先の利益に飛びつくのではなく先を見据えた計画性が求められます。
資源インフラの整備
まずは採石場(石)、森(木材)、粘土場(粘土)、鉱山(銀貨)といった「基本資源」を安定して得られる体制を作りましょう。序盤のワーカー配置はなるべく広範囲に散らし、資源獲得効率の底上げを狙います。
弟子カードで方針を定める
早い段階で1〜2枚の弟子カードを獲得し、それを軸に中盤以降の方針を定めていくのが理想です。例えば、「建築コストを減らす弟子」や「資源取得時にボーナスを得られる弟子」があれば、建物特化型に進むと有利です。
美徳か悪徳か、方向性の決定
どちらの方針にも一長一短がありますが、中途半端なスタイルは勝ちきれない要因になります。たとえば、美徳戦略を選ぶなら闇市場を使用せず徴税を控えるなど一貫した行動が必要です。
手札建物の読み込みと目標設定
手元にある建物カードをしっかり読み込み、必要な資源と弟子の種類を把握しましょう。この段階で「目指す建物」が定まっていると無駄のないプレイが可能になります。
中盤戦略:効率と差別化を意識した展開
中盤は、ワーカー数が増えてきて他プレイヤーとの干渉が本格化する段階です。この時期の戦略は、「自分の強みを伸ばし、他人の妨害をうまくかわすこと」が肝になります。
資源の集中取得とコンボ構築
ワーカーを3人以上同じ場所に集中させることで1アクションのリターンを飛躍的に高められます。弟子カードとのコンボがかかると、採石場で「石4個+銀貨1枚」などの爆発的な獲得も可能になります。
建物建設による差別化
中盤は建物を建てるチャンスが増える時期です。序盤に計画した「目標建物」を完成させることで得点だけでなく、即時効果でリソースや美徳を得られることもあります。戦略に合った建物を建てることで他プレイヤーとの差を作りましょう。
ワーカーの循環計画
この段階で「捕縛→刑務所→回収」の流れを自分でコントロールできるようになっておくことが重要です。他人任せにせず、自分で捕縛したワーカーをすぐに刑務所に送りその銀貨で再投資するループが理想です。
闇市場の活用(悪徳戦略の場合)
銀貨や大理石を早く手に入れる必要がある場合は、闇市場が強力な選択肢になります。とはいえ、美徳の低下と借金のリスクが付きまとうため、「闇市場3連打」などの無計画な使用は避けましょう。
大聖堂建設の先手
美徳戦略を選んでいる場合は、中盤から大聖堂建設に着手することで「他プレイヤーの妨害」と「ゲームのペースコントロール」が同時に可能です。上層まで進めばボーナス得点もかなり高くなります。
終盤戦略:得点回収と美徳調整のフェーズ
終盤はリソースの蓄積よりも、「得点に直結する行動」への転換が求められます。また、全体のプレイテンポにも注意が必要です。
勝利点効率の高い建物を優先
高得点の建物や、終了時にボーナスが付く建物を積極的に建てましょう。即時効果よりも、「ゲーム終了時に◯点を得る」といった持続的な価値を重視することがポイントです。
美徳値の調整
特に悪徳戦略で進めてきた場合、「終盤に王室倉庫で一気に美徳を上げる(美徳スリングショット)」というテクニックが効果を発揮します。これにより、大聖堂への建設が解禁され、マイナスポイントを大幅に削減することも可能になります。
ギルドホールとゲーム終了タイミング
ギルドホールの埋まり具合はゲーム終了のトリガーです。他プレイヤーの建設状況を見て、次のターンでゲームが終わるのかどうかを常に意識しましょう。終わり方を読めると、手札の最適化や最後の大聖堂建設が可能になります。
借金返済の判断
借金カードは1枚につき−3点という大きなペナルティになりますが、返済のために他の行動が犠牲になるなら注意が必要です。「借金返済で3点得られるが、建物を建てると7点」という場合は、後者を優先すべきです。
プレイスタイル別・専門的戦略アプローチ

美徳戦略と悪徳戦略の徹底比較
本作における最も象徴的な選択が「美徳」の値をどう扱うかです。これは単なる勝利点の加減ではなく、ゲーム中の行動範囲を左右する重要な軸になります。
美徳戦略の特徴と利点
美徳値を高く保つことにより、以下のような利点が得られます:
- 大聖堂への建設が可能:大聖堂は最大で20点近い得点源になり、美徳がなければそもそも関われません。
- ゲーム終了時に勝利点ボーナス:美徳値10以上でボーナスが付くため、コツコツ積み上げるほど報われます。
- 借金が発生しにくい:闇市場の利用が抑えられるため借金カードを引くリスクが減少します。
- 一部の弟子と好相性:司祭や学者など、美徳を条件とする弟子を活かしやすいです。
デメリットとしては、リソース入手ルートが制限されること(特に金貨・大理石)や、徴税コストがかかることが挙げられます。
悪徳戦略の特徴と利点
美徳を低く抑えてプレイする「悪徳戦略」は、効率性重視のルートです:
- 闇市場で希少資源を効率的に入手:金貨、大理石、弟子カードを闇市場で早期に獲得でき、建設速度が上がります。
- 徴税を免除できる:銀貨の支払いなしで高額アクションを実行でき、経済的に非常に有利です。
- 特定の弟子が強化される:収税吏や債務回収人など、悪徳路線を後押しする弟子との相乗効果があります。
- 美徳回復による「スリングショット戦略」が可能:終盤に美徳を一気に回復することで、マイナス点を回避できます。
リスクとしては、借金の蓄積、美徳によるボーナスの喪失、大聖堂の建設不可、弟子の選択肢の狭さなどが挙げられます。
おすすめの考え方:初プレイや大聖堂建設を試したい場合は美徳戦略、効率とリソース爆発を楽しみたいなら悪徳戦略がおすすめです。
大聖堂戦略 vs 建物特化戦略
どちらを得点源とするかでプレイ方針が大きく変わるため、選択の段階である程度の方向性を決めておくとスムーズです。
大聖堂戦略のメリット
- 段階的に得点が上がる:1段階ごとに勝利点が増える仕組みで、最大レベル到達で大量得点が見込めます。
- 他プレイヤーの妨害にもなる:大聖堂スペースを早めに埋めることで、他プレイヤーの建設機会を制限できます。
- プレイペースを支配できる:大聖堂の進行状況がギルドホールの建設スピードに影響するため、ゲームの終了タイミングを調整する手段にもなります。
注意点:
- 大量の石材・金貨・大理石が必要で、資源管理が難しい
- 高美徳が必須なので美徳を一度でも下げる行動がしづらくなる
建物特化戦略のメリット
- 柔軟性の高さ:資源や弟子カードによって建設候補を自由に選べるため、戦術の幅が広い
- 即時効果が得られる:建物の中には建設時に資源や弟子カード、美徳などを得られるものもあります
- コンボが組みやすい:資源変換+得点加算といった相互に補完しあう建物を並べて使うことが可能です
注意点:
- 建物だけでは点数が分散しやすく大きな一撃が出にくい
- 他プレイヤーと同系統の建物を取り合う可能性がある
借金戦略の実践
上級者向けのリスク覚悟戦略として、あえて「借金カード」を受け入れた上でそれを活用するプレイングがあります。
借金戦略の基本構造
- 闇市場を頻繁に利用し刑務所にワーカーを溜める
- 借金カードを意図的に受け取り早期に資源・銀貨を大量確保
- 「債務回収人」や「守衛」などの弟子を使って借金回収やワーカー解放を高速化
- 終盤に美徳値を上げ借金を返済
借金戦略のキーカード
- 債務回収人:1手番で借金を返済できる能力を持ち、複数枚あると非常に強力
- 守衛:闇市場リセット時にワーカーを刑務所から無料で解放できる
- 徴税官・盗賊系:銀貨やリソースを簡単に得られる弟子との併用で加速が可能
運用上の注意点
- 借金カードは3点のペナルティという強烈なデメリットを持つため、返済できない場合は致命的です
- 借金返済と建物建設の優先順位を慎重に判断し、無理に返済するより得点源に回した方が得な場合もあります
実践的なテクニックと戦術

ワーカー配置の最適化
「西フランク王国の建築家」は、“どこに”“何人”ワーカーを配置するかによってアクションの効率が大きく変わるゲームです。
序盤は分散、終盤は集中
- 序盤(1〜2ターン目):他プレイヤーに警戒されないようにワーカーを分散して配置しましょう。特定エリアに早々に3体以上集中させると、捕縛の対象にされやすくなります。
- 中盤〜終盤:効果を最大化するために、4体以上同じアクションスペースに集中させて一気に大量資源を獲得することが推奨されます。
捕縛を“自ら”行う戦術
- ワーカーが3〜4体溜まった場所は、自分で捕縛して刑務所送り→回収の流れを作ると、ワーカーを安全に使い回せます。
- 他プレイヤーに捕縛される前に自分で捕縛すれば、銀貨は得られませんがワーカーの再利用がスムーズになります。
弟子カードの選び方と活用術
弟子カードは戦略の土台を形作る重要な要素です。効果的な選び方をするだけで、ゲーム全体がスムーズになります。
基本原則
- 戦略との整合性を最優先
美徳戦略なら「司祭」や「大工」、悪徳戦略なら「債務回収人」や「盗賊」など、選ぶ弟子は方針に沿ったものにしましょう。 - 効果が矛盾するカードの組み合わせを避ける
例えば、「闇市場を利用してボーナスを得る弟子」と「刑務所にワーカーがいないと得点を得る弟子」は共存が難しいです。 - 序盤に取るべきカード
「採石場で+1」「木材獲得でボーナス」など、基本資源を強化する弟子は、序盤で取ると長期的な価値が高くなります。 - 回収効果を持つカードを終盤に活用
「回収時に銀貨+1」「美徳+1」などの効果は、終盤の得点調整や再投資のために有効です。
闇市場と大聖堂の“リスクと報酬”の管理
闇市場の利点とタイミング
- 銀貨3枚で金貨や大理石を即獲得できるため、建物建設・大聖堂建設の準備を一気に進められます。
- ただし、3回使用するとリセットが発生し、刑務所にいるワーカー数に応じて借金カードが配られるので注意が必要です。
大聖堂建設の注意点
- 1段階進めるごとに建物カードの廃棄+資源支払いが必要となるため、計画的な資源・カード管理が必須です。
- 他プレイヤーより早く進めることで優位に立てる(スペースを埋めて妨害)メリットがあります。
プレイヤー人数ごとの戦略アジャスト

2人プレイの特徴と対策
- インタラクションが密になるため、捕縛や闇市場リセットの影響が直接的になります。
- 大聖堂競争が加速しやすいので、放置すると一気に差をつけられる危険があります。
- 1人が悪徳に傾くと、もう1人は美徳で対抗せざるを得ないなど戦略選択が相手次第になります。
3〜5人プレイ時の留意点
- ワーカーの捕縛が重要な妨害手段になるため、誰を狙うかの判断がより戦略的に。
- 闇市場の競争率が上がるので利用タイミングの見極めが重要。
- ゲームの終了ペースが速まりやすい(ギルドホールが早く埋まる)ため、早期得点化が求められます。
初心者が犯しやすいミスとその対策
よくあるミス | 対策方法 |
---|---|
弟子の選択ミス | 最初に方針を決めそれに沿った効果を持つ弟子を優先しましょう。 |
美徳の管理不足 | 悪徳に寄せる場合は終盤での回復プランをあらかじめ用意しておきます。 |
借金の処理忘れ | 借金は-3点と大きな影響があるため、返済のタイミングを明確にしておきましょう。 |
ゲーム終了タイミングの見落とし | ギルドホールの建設数をこまめにチェックし、終盤行動を前倒しに計画しましょう。 |
資源の偏り | 粘土・木材・石のバランスが崩れると建設が滞るため、資源供給源を複数用意します。 |
上級者向けの高度なテクニック集
このセクションでは、経験者が実践することでプレイ精度をさらに高められる、実践的かつ戦略的なテクニックをご紹介します。
ゲームペースのコントロール
- 大聖堂による終盤の加速
自分が大聖堂建設を主導することで、ゲーム終了タイミングを操作できます。早く終わらせたいならギルドホールへの建設と並行しつつ大聖堂を急いで進めましょう。 - 妨害的建設
他プレイヤーが特定の建物を狙っていると察知したら、資源や弟子を横取りする形で阻止することも視野に入ります。
闇市場リセットの誘発操作
- 闇市場がリセットされるタイミングを見計らって自分の刑務所のワーカーを回収済みにし、他プレイヤーに借金カードを押しつける動きが可能です。
- 他プレイヤーがワーカーを溜め込んでいる状況では、闇市場をわざと埋めにいくことで大きな差を生み出せます。
美徳スリングショット戦略(終盤爆上げ)
- 序盤から中盤にかけては闇市場や徴税を積極的に活用して銀貨とリソースをかき集め、終盤に「王室倉庫」などで一気に美徳を回復するという大胆な戦術です。
- これにより、低美徳のデメリット(借金、マイナスポイント)を最小化し、かつ闇市場の効率を最大限活かすことができます。
複合戦略の実行(ハイブリッド戦法)
- 単一の戦略に固執せず、「中盤までは悪徳で資源を集め、大聖堂は中盤から」「借金戦略+建物シナジー」など、複数の軸を柔軟に組み合わせることで、展開に応じた対応力が生まれます。
相手の読みと心理戦
- 他プレイヤーの弟子や建物カード、ワーカー配置から戦略の方向性を読み取り、それに合わせて自分のアクション順序や捕縛タイミングを調整するのが上級者ならではの技です。
総まとめ:建築家としての手腕を磨こう
「西フランク王国の建築家」は、その見た目以上に奥深い戦略性を秘めたゲームです。単なる資源管理だけでなく、他プレイヤーとの駆け引き、道徳的選択、美徳と悪徳のバランス、タイミング操作といった多くの要素が絡み合い毎回異なるプレイ体験を提供してくれます。
勝利への5つのカギ
- 美徳・悪徳を使いこなす明確な方針
- 弟子と建物の効果的な組み合わせ
- ワーカーの最適な配置と回収
- 他プレイヤーの行動に対する読みと対応
- 終盤の計画性と得点への最終調整
そして何より重要なのは、その場の状況に応じて戦略を変化させる柔軟性です。
初めてこのゲームに挑戦する人も、何度もプレイしているベテランも、本ガイドを活用して自分だけの建築家スタイルを確立し、王国に名を残す偉大な建築家を目指してください。
参考資料
- BoardGameGeek – Virtue strategies imbalanced?
- BoardGameGeek – Strategy: Cathedral or not
- Reddit – Tips for Architects of the West Kingdom
- Reddit – Architects of the West Kingdom – Perspective needed
- Elusive Meeple – Architects of the West Kingdom Strategy Tips
※画像はBGGより引用しております。
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