カートグラファーは、一見すると気軽に楽しめるフリップ&ライト形式のゲームですが、実は極めて戦略的な要素を数多く含んでいます。プレイヤーが取り組むべき課題は「限られた時間」「限られた空間」「複雑に絡み合うスコア条件」「ランダムなカード順」と多岐にわたります。本記事では、BoardGameGeekや英語圏の戦略情報をもとに、初心者から上級者まで役立つ具体的な戦略とプレイのコツを詳しくご紹介します。
基本戦略:優先順位の決定
最重要原則:後半の目標を優先する
ゲームでは常に4つのスコアカード(A~D)が提示され、各ラウンドで2つずつ評価されます。特に注目すべきは「後半にスコア対象となるカードにどれだけ準備を投資できるか」です。すでに評価が終わっている目標に固執するのは効率が悪く、まだ2回評価されていない目標=得点機会が多いものに注力すべきです。これにより、限られたマス数を最大限に活用できます。
大型プロジェクトの特定と分散投資
ゲーム序盤では、提示された4つのスコアカードの中から最大得点を生み出し得る目標を見極めましょう。得点効率が高い目標に一極集中するのではなく、複数の目標にまたがる配置(兼用配置)を意識すると、最終的な点数効率が飛躍的に向上します。例えば「GREAT CITY(偉大な都市)」プロジェクトと「SHORESIDE EXPANSE(岸部の広場)」が同時に出ている場合、村と水域を隣接させて両方に得点できるよう工夫することが鍵です。
モンスター戦略:早期包囲の重要性
モンスターを軽視してはいけない理由
モンスターの存在は、単に得点を削るだけでなく、配置の自由度そのものを大きく制限します。特にゲーム前半(春・夏)に登場するモンスターは、放置すると合計で10点近い損失に直結します。したがって、出現したラウンド中に包囲できなくとも、次のラウンド冒頭では最優先で対応する姿勢が大切です。
モンスターを利用する(対人プレイ時)
対戦型ルールでは、モンスターを他人のボードに描き込みます。このときのポイントは「ただ嫌がらせするのではなく、相手の戦略を崩す」ことです。たとえば、相手が3×3の村(GREAT CITY)を作ろうとしているなら、その中心部にモンスターをねじ込むことで、そのスコア目標そのものを潰すことができます。端に配置すると包囲が容易になるので、なるべく中央付近やボードのくびれた位置に置くと効果的です。
コイン戦略:早期獲得の価値
コインの価値はラウンドによって変動する
カートグラファーでは、ゲームを通してコインを最大6つ獲得できますが、それぞれの価値は獲得するタイミングによって大きく異なります。春に獲得したコインは4ラウンドすべてで得点化されるため、最大で4点の価値を持ちます。夏なら3点、秋なら2点、冬では1点しか稼げません。つまり、春の1コインは、冬の4コインに匹敵する価値を持っているといえます。
小さくても光る!コイン付き小型タイルの選び方
プレイヤーは選択肢として「大きな形状のタイル」か「小さいがコイン付きのタイル」を選ぶ局面に頻繁に遭遇します。このとき、後者を選ぶことは長期的な得点を安定させるうえで非常に重要です。形状の大きさよりも、得点としての持続性・繰り返しのスコア化を重視するべきです。
空間配置戦略:中心から外向きに
なぜ中央から広げるべきか
多くのプレイヤーがついボードの端から配置を始めてしまいますが、これは後の自由度を大きく奪う原因となります。カートグラファーでは形状の自由度が少なく、さらにランダム性も高いため、空白マスの残し方が非常に重要です。中心から広げるように配置することで、後半の大きなタイルにも対応しやすくなり、スコアカードに対応した再構築がしやすくなります。
大型プロジェクトに備える配置術
「GREAT CITY(偉大な都市)」や「LOST BARONY(失われた荘園)」など、大型ブロックを必要とする目標は特に配置の余白が重要です。序盤から「将来の建築予定地」を意識して、あえて空白を残しておくプレイは、上級者ならではの技です。また、遺跡マス周辺を空けておくことで、後に出る遺跡カードで柔軟に得点補完が可能になります。
スコアカード別戦略
高得点期待カードの特徴と立ち回り
- Lost Barony(失われた荘園):配置が難しい反面、最大30点が狙えるロマンカード。序盤から意識して構造を構築し、秋~冬で一気に完成させると大きなリターンが得られます。
- Borderlands(辺境):辺縁部を囲む配置はやや縛りが強いものの、点数効率は抜群。端から配置してしまうと対応が困難になるため、内側に予備的な列を作ることで対応力が上がります。
- Broken Road(壊れた道):連続性ではなく分断が評価される珍しいタイプのカード。あえて広げすぎず、点在配置で得点が伸びるという逆転の発想が求められます。
村と地形の組み合わせ最適化
村系スコアカードでは、特定の地形(森林や水域)との隣接条件が鍵になることもあります。SENTINEL WOOD(歩哨の森)やGREENGOLD PLAIN(緑金の平野)では、単体では点が伸びにくくても、他カードとの複合で爆発的な得点源になります。単独のカードで考えず、全体の相乗効果で評価しましょう。
遺跡の先制活用
1×1遺跡は最終兵器
遺跡カードは、プレイヤーに1×1の任意地形タイルをプレゼントしてくれる貴重な機会です。このカードの真価は「最後の隙間を埋められる万能ピース」である点にあります。スコア条件のラスト1マス、包囲未完のモンスター横、さらには高得点の完成条件直前の足りない1マス——こうした「あと1点」を救えるのが遺跡です。そのため、遺跡マスは埋めずにキープしておくのが鉄則です。
数値計算とスコア予測
カード出現傾向と期待値管理
地形カードはタイプごとに平均2枚ずつ出現すると想定できます。たとえば、森林がスコア条件に含まれているなら、1シーズンで2~3枚は出ると考え、その配置を前提に得点計画を立てましょう。形状が不規則でも、平均10マス前後を1タイプで埋める想定をしておくと、失敗リスクが軽減されます。
ソロプレイ時の進捗チェック法
ソロプレイヤーにとって便利なのが、「右下に書かれた期待スコア」の存在です。1シーズンごとにそのスコアの25%(1/4)を目指す意識を持つことで、中間の段階で自分の進捗を客観視できます。期待スコアの半分にも届いていないなら、後半で何かを捨てて一点集中に切り替える必要があるかもしれません。
高度なテクニック
ポイント確保のタイミングと「後回し罠」の回避
「この形は後で完成させればいい」と思っていたものが、モンスターの出現やタイルの不一致によって未完成のまま終わってしまうケースは少なくありません。特にゲーム終盤は時間も空間も制約が強くなるため、完成の目処が立っているパターンは早めに処理しておくべきです。後悔先に立たず、がこのゲームの合言葉です。
僅差勝負では防御が攻撃を上回る
多くのカートグラファーの勝敗は、わずか数点差で決着がつきます。そのため、ラウンド終盤では「1点を獲得する行動」よりも「1点の失点を防ぐ行動」の方が効率的であることが多いです。未包囲のモンスター、埋まらない空白、スコア条件にわずか届かない構造——こうした失点要因を見つけて減らすことが、上級者の一歩です。
まとめ:勝利への道筋
カートグラファーは、シンプルなルールの裏に隠された高度な戦略性が魅力のゲームです。運の要素も確かにありますが、それを補完する判断力と計画性が、スコアに大きく影響します。
本記事で紹介したポイントをまとめると:
- 後半ラウンドを見据えた目標優先順位の設定
- 早期のモンスター対策による損失防止
- ゲーム序盤でのコイン獲得とそれに伴う得点積み上げ
- 中心から広げる空間戦略と遺跡活用の布石
- スコアカードの特性理解と効率的な兼用配置
- 数値的な進捗管理とリカバリ戦略の柔軟性
これらを実践することで、毎回のプレイがより深く、洗練されたものになります。プレイを重ねるごとに自分の戦略眼の成長を実感できるのも、カートグラファーの大きな魅力です。
参考文献:
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